酒と狩りの日々

楽しく生活するためのマテリアル

美に触れた話

(とても、いい匂いがする──。)

 

 

 

 

 

 

 

 

よう、お前ら。

突然だが、お前らは知っているか?

そうか、当然知っているな。

 

言わずと知れたホスト界の帝王 “ROLAND

 

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(画像はインターネットより拝借)

美しいな。

 

 

 

ヤった。

 

 

 

俺は、先日、こいつに似た男とヤった。

 

 

 

 

 

 

 

人間、どうしても性欲を抑えることができない時がある。僕は数週間人間と交わっておらず、多忙ゆえ自らを慰めることすらできず(※アナニーは時間がかかる)に日々を過ごしていた。

しばらくしてようやく自分の時間が取れるときが来た。そろそろ限界だし人間と交わりたい……だがいくら都内とはいえ住宅地の上、深夜。これは望み薄かと思いながらインターネットの海に釣り糸を垂らし線状にインクを撒きながら待っていた。

かかった。

釣り糸が沈むのを僕は見逃さなかった。

いそいそと獲物を覗き込む。

 

なんだ、これは──。

 

僕は痩せていようが太っていようが鍛えている方であれば大体いただけるのだが、彼はなかなか鍛えているようだ。それなりに絞れている。ここは先ず突破。

顔。

僕は少年のような、素朴というか垢抜けていないというか、とにかくそんな顔が好きだ。身体が好みではなくとも顔が好みであれば。だが此度の獲物はそうではなかった。男らしいかと言われればそうではない。女性的かと言われてもそうではない。

ただ、美しいのだ。

 

深夜かつ、欲が限界まで膨らみきった僕には選ぶ余地もなく何かに取り憑かれたかのようにそれなりの準備をし、たまたまそう遠くない地に住まうという彼のもとへ赴く。

インターホンを鳴らす。応じるように開く扉。

 

想像以上だ。

あまりにも美しい。

ROLANDは整形を重ねたことがひとめでわかる不自然な美貌を持っているがこのROLAND(仮)は違う。自然に感じる範囲内でどこに出しても恥ずかしくない程度に整っている。白金に煌めく長髪も美しい。

そんな美の顕現とも呼ぶべきROLAND(仮)は僕を見て笑う。

「可愛いね、俺、ガチムチ好きなんだよね」

 

──いや俗物か。

 

罷り間違えようとも僕は自らをガチムチ様と同類だなどと思っていないが、仮にも美しさに見惚れていた相手からそんなこと聞きたくなかった……。

 

雲行きの怪しい僕の心情など置き去りにして、ROLAND(仮)は僕へ歩み寄り、抱きしめ、寝床へとエスコートする。

長い、サラサラの髪が顔に当たる。いてえ。刺すな。おい。いてえって。

そのまま、マットレスを背にした顰め面の僕を押し倒すROLAND(仮)。

 

えっ美しっっっっっっっ!?!?!?!?!?!??!?!!??

 

僕を見下ろすROLAND(仮)に応じるように枕から見上げる。片方の耳に髪を掛ける。あまりの美しさに呼吸すら意識の彼方に遠のく。美人OLのような所作がこれほど似合う男はいないだろう。

そのまま僕の身体に降りてきた“美”はきつく僕を抱きしめる。

(とても、いい匂いがする──。)

美しい白金からは花の園のような麗しい香りがただよう。

 

美の芳香に囚われた僕はROLAND(仮)の意のままに前戯を受け入れ、また僕も奉仕する……。

 

「そろそろ、いいよね?」

 

ひと通りまぐわった後、そう月並みな言葉を落としたROLAND(仮)(どこまで俗物なのだ……)はベッドの脇から潤滑液と避妊具を取り出す。

それなりの大きさ(*餃子美味社会邸に来たことがある方はテレビ脇に聳える塔を想像して欲しい)の

“其れ”に慣れた手つきで皮膜を形成していく。

 

颯と潤滑液を皮膜越しの其れに付ける。

くちづけを落とすように優しく鋒をあてがったその瞬間、ROLAND(仮)は僕のコンキスタドールと化した。

 

巧い──。

 

征服者はひと突きひと突き着実に僕の情けない城を崩し、其処に酒池肉林の楽園を築き上げていく。

至らんとする度、地に堕とされる。歯痒い。

 

僕はROLAND(仮)のなすがままに天を仰いだり地を睨めつけたりしているうちに愈々辛抱ならず、息も絶え絶えに、天上楽土へ至ることから逃れられないことを告げた。

ROLAND(仮)は美しさを崩さぬまま笑い、そのまま僕を誘い、自らも巓へと至った。

 

 

「キミみたいな子は共食いが多いから久々に楽しかったよ。」

花が風に揺れるように笑う。